​受賞者講演

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児玉賞

長塩 亮

Ryo Nagashio

抗体作製を基盤とした肺がんの各種診断マーカーの獲得

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服部

​野口 玲

Rei  Noguchi

ゲノムより面白い!プロテオームを加えたマルチオミックスだ!:

がんのプロテオゲノミクス解析と網羅的キナーゼ活性解析

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橋本賞

井野 洋子

Yoko Ino

SARS-CoV-2 ヌクレオカプシドタンパク質のリン酸化のおよびプロリン異性化酵素 Pin1との相互作用解析

​児玉賞

 
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長塩 亮 (ながしお りょう)

北里大学医療衛生学部医療検査学科臨床検査学

北里大学大学院医療系研究科応用腫瘍病理学

北里大学医療衛生学部附属再生医療・細胞デザイン研究施設 

抗体作製を基盤とした肺がんの各種診断マーカーの獲得

 

Acquisition of diagnostic and prognostic markers for lung cancers using
antibody-based proteomics.

肺がんは膵がんとともに難治性がんの代表であり、本邦での肺がんの死亡者数は男女ともに第1位である。肺がんは症状が比較的出現しにくく、肺がんの早期診断に有用なマーカーもないため、初診時には、すでに進行がんである場合がある。分子標的治療薬やプラチナ製剤を基本とした多剤併用療法なども用いられているが、効果はいまだ不十分であり、予後不良の原因となっている。肺がん患者の予後の改善には、早期診断により根治的治療に結び付ける必要があり、それを可能とするための新たな診断マーカーの獲得は喫緊の課題である。

当研究室では組織診断や血清診断に有用な抗体の獲得を目指し、がん組織や培養細胞を直接マウスの腹腔に免疫するという特徴的なランダム免疫法により、2000クローンを超える単クローン性抗体産生ハイブリドーマを樹立してきた。このランダム免疫法は合成ペプチドなどの精製抗原を用いた従来の抗体作製法では獲得することの出来ない疾患特異的な翻訳後修飾を受けたタンパク質を認識する抗体の獲得が可能である。この手法を用いて作製した抗体群について、肺がん症例を用いた免疫染色や肺がん患者血清を用いたReverse-phase protein array法による血中抗原量の測定を行うことで診断マーカーとしての有用性を評価してきた。本発表では獲得された抗体の有用性について紹介したい。


略歴

2008年 群馬大学大学院医学系研究科医科学専攻博士課程修了

2009年 国立がん研究センター研究所 分子病理分野 リサーチレジデント

2011年 北里大学医療衛生学部医療検査学科臨床検査学 助教

2014年 北里大学医療衛生学部医療検査学科臨床検査学 講師

2019年 北里大学医療衛生学部医療検査学科臨床検査学 准教授

2020年 北里大学医療衛生学部医療検査学科臨床検査学 教授

​服部賞

 
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野口 玲 (のぐち れい)

国立がん研究センター希少がん研究分野

ゲノムより面白い!プロテオームを加えたマルチオミックスだ!:
がんのプロテオゲノミクス解析と網羅的キナーゼ活性解析

 

Proteome is much more interesting than genome:

proteogenomics and comprehensive kinase activity analysis in oncology

昨今、クリニカルシークエンスなどゲノムを用いたがん研究が席捲しているが、本当にそれでいいのだろうか?クリニカルシークエンスでは治療標的となりうる遺伝子変異が同定されたとしても、同定された変異に対応した分子標的薬が必ずしも奏効するわけではない。シークエンスを施行した症例のうち、奏効する治療薬にたどり着けるものは10%と低い。また、分子標的薬の中でも多くを占めるキナーゼ阻害薬では、ゲノム異常を伴わないものが存在する。そのために、ゲノム異常だけで治療方針を決めるのではなく、ゲノムに加え、違う角度からのアプローチも必要でなかろうか?そこで我々の研究室ではプロテオゲノミクスとキナーゼ活性に注目し、マルチオミックス解析を行っている。ここでは、私が開発したサンプル特異的なプロテオームデータベースを作成するプロテオゲノミクスソフトウェアの研究をご紹介する。そして、微量のタンパク質を用いて実施可能な網羅的キナーゼ活性解析の研究についてお話しする。

キーワード: 3個
1. proteogenomics   2. kinase activity   3. oncology 


略歴
2006年        東京女子医科大学医学部卒業
2006-2008年    東京女子医科大学病院初期臨床研修医
2008-2010年    東京女子医科大学病院循環器内科
2010-2013年    榊原記念病院循環器内科レジデント
2013-2016年    東京大学医学系研究科大学院 博士課程
2016-2018年    東京大学医科学研究所臨床ゲノム腫瘍学分野 特任研究員 
2018-2019年    国立がん研究センター希少がん研究分野 特任研究員
2019年-        国立がん研究センター希少がん研究分野 研究員
東京大学医科学研究所ゲノム診療部 非常勤講師
2020年-        日本電気泳動学会事務局
2021年-        日本臨床プロテオゲノミクス学会 事務局、理事
2022年-        日本電気泳動学会 評議員
日本患者由来がんモデル学会 理事
武蔵野大学薬学部 客員講師

​橋本賞

 
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井野 洋子 (いの ようこ)

横浜市立大学 先端医科学研究センター

SARS-CoV-2 ヌクレオカプシドタンパク質のリン酸化および

プロリン異性化酵素 Pin1との相互作用解析

 

Phosphopeptide enrichment using Phos-tag technology reveals functional phosphorylation of the nucleocapsid protein of SARS-CoV-2

  • 著者名:井野洋子1・西真由子2・山岡悠太郎2,3・宮川 敬2・木村弥生1・梁 明秀1,2

  • 所属:1横浜市立大学 先端医科学研究センター・2横浜市立大学 医学研究科・3関東化学株式会社 技術・開発本部生命科学研究所

ウイルスタンパク質のリン酸化は、ウイルスの感染、増殖および病原性発現に関与していることが知られている。本研究では、Phos-tagマグネットビーズを用いてSARS-CoV-2のヌクレオカプシドタンパク質(NP)のリン酸化部位を同定した。同定されたリン酸化部位は、近縁のコロナウイルスでは保存されていない、SARS-CoV-2特有のアミノ酸であった。またこのリン酸化部位の次のアミノ酸残基がプロリンであったことから、NPと宿主プロリン異性化酵素Pin1との相互作用について確認したところ、Pin1が本リン酸化部位に結合することが明らかとなった。さらに、Pin1ノックダウンにより細胞上清中のウイルスRNA量が顕著に低下した。これらの結果から、SARS-CoV-2 NPは進化の過程で新たなリン酸化を獲得し、本リン酸化部位におけるPin1との相互作用が、ウイルス複製を正に制御している可能性が示唆された。

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図:研究概要(J.Proteomics, 2022 Mar 20;255:104501.より改変)

略歴
2000年3月 佐賀大学農学部応用生物科学科卒業
2000年4月 石橋工業株式会社入社 品質検査課
2005年5月  横浜市立大学木原生物学研究所生体超分子相関科学研究室 技術員
2007年4月 北興化学工業株式会社
2008年5月 横浜市立大学生体超分子相関科学研究室 特任助手
2015年4月 横浜市立大学先端医科学研究センター 特任助手(現在に至る)
2020年4月 群馬パース大学大学院保健科学研究科保健科学専攻 社会人研究生(現在に至る)