​一般口演

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一般口演1 がんと電気泳動

一般口演 1-1

口腔がんPDXモデルライブラリーの樹立

Establishment of PDX model for Oral cancer

刈谷 龍昇1・Gunya Sittithumcharee1・吉田 遼司2・関 祐紀2・岡田 誠治1

1 熊本大学大学院 ヒトレトロウイルス学共同研究センター 造血腫瘍制御学分野

1 熊本大学大学院生命科学研究部 総合医薬科学部門 感覚・運動医学分野 歯科口腔外科学講座

 

近年、外科手術で摘出したがん患者の腫瘍組織を、高度免疫不全マウスに移植して作成されるPDX (Patient-Derived Xenograft) モデルが、がん患者の病態を忠実に再現したモデルとして注目されている。このPDXモデルは、がん患者の腫瘍の性質や抗がん剤に対する反応性を保持しているため、新規がん治療薬開発への活用が進められている。我々はPDXモデルマウス樹立に適した高度免疫不全マウスBALB/c Rag-2/Jak3 KO (BRJ) マウスに70症例以上の口腔がん手術検体を移植し、40症例を超えるPDXモデルの樹立に成功している。また、PDXモデルマウスから摘出した腫瘍組織をin vitroで長期培養することで、PDX由来口腔がん細胞株の樹立を進めている。これら口腔がんPDXモデルマウスの腫瘍組織や、PDX由来口腔がん細胞株を皮下に移植したモデルマウスの組織は、口腔がん患者の腫瘍組織の組織像をきわめて忠実に再現していた。本学会では、樹立した口腔がんのPDXモデル及びPDX由来口腔がん細胞株について紹介する。

 

キーワード: 1. PDXモデル   2. 口腔がん   3. 高度免疫不全マウス 

一般口演 1-2

腎細胞がんのPDXモデルの樹立

Establishment and characterization of Renal cell carcinoma patient-derived xenograft

Piyanard Boonnate1, Jutatip Panaampon1, Yukiko Ogura, Makoto Abe, Kaoru Hirabayashi,

Satoshi Kamio, Rumi Nakagawa, Ryusho Kariya1, Kazutaka Kikuta, Seiji Okada1

1Division of Hematopoiesis, Joint Research Center for Human Retrovirus infection, Kumamoto University, 2-2-1, Honjo, Kumamoto 860-0811, Japan

 

Renal cell carcinoma derived from tubular epithelium. Clear cell renal cell carcinoma (ccRCC) is the highest incidence and the most common histology subtype. However, the mortality rate is still high. Therefore, early diagnosis and treatment strategies are required. Patient-derived xenograft (PDX) models are created by engraftment of patient tumor tissues into immunocompetent mice which retains the characteristics of the patient tumor including gene expression profiles and drug responses. We aimed to develop a patient-derived xenograft (PDX) model as well as PDX-derived cell lines of ccRCC from the same patients for characterization and future drug screening.

 

Keyword: 1. Patient-derived xenograft (PDX)  2. Clear cell renal cell carcinoma (ccRCC)

一般口演 1-3

尿中抗体を利用した膀胱がん関連タンパク質の同定

Identification of bladder cancer-related proteins using urinary antibodies

長塩亮1-3・朽津有紀1-3・今井基貴1-3・西原奈菜枝2・田村慶介2・松本和将4

1 北里大学医療衛生学部医療検査学科臨床検査学, 2 北里大学大学院医療系研究科応用腫瘍病理学,

3 所北里大学医療衛生学部附属再生医療・細胞デザイン研究施設, 4 北里大学医学部泌尿器科学

 

膀胱がんは特異的な診断マーカーがなく、検診などで使用可能な診断法がないことから、診断時には進行がんであり治療が困難となる場合がある。そのため、より早期に膀胱がんを検出でき、かつ簡易検査で使用可能なマーカーの獲得が期待される。本研究では直接腫瘍に晒されている膀胱がん患者尿に着目し、尿中に含まれる抗体を回収し、精製した。それらの抗体を一次抗体として用いて、膀胱がん細胞のタンパク質を対象とした二次元免疫ブロット法を行った結果、膀胱がん細胞株が持つタンパク質に対して反応性を示す尿中抗体が多数検出され、質量分析壮途を用いた抗原同定を行った。抗原が同定された抗体の中には、検討に用いた膀胱がん患者の8割以上で共通して検出された抗体もあり、有望な膀胱がんの診断マーカーである可能性が示唆された。

 

キーワード: 1. 膀胱がん   2. 尿中抗体   3. 診断マーカー

一般口演 1-4

膜タンパク質を標的としたショットガン解析による肺腺がんマーカー候補分子の探索

Acquisition of diagnosis markers for lung adenocarcinoma by shotgun analysis targeting membrane proteins

朽津 有紀1-3・西原 奈菜枝2・小寺 義男4・田村 慶介2・今井 基貴1-3・土屋 紅緒2,3,5・長塩 亮1-3

1 北里大学 医療衛生学部 臨床検査学, 2 北里大学大学院 医療系研究科 応用腫瘍病理学,

3 北里大学 医療衛生学部附属 再生医療・細胞デザイン研究施設細胞デザイン開発センター,

4 北里大学 理学部 物性物理学, 5 北里大学 医療衛生学部 病理学

 

本邦における肺がんの中で腺がんは最も多い組織型であり、初期症状が少なく、無症状のまま進行している場合が多い。現在、臨床で使用されている肺腺がんの血清診断マーカーは、小さな腫瘍では検出限界以下となるため、早期がんの発見は困難である。本研究では肺腺がんの新たな診断マーカーの獲得を目的として、肺腺がん細胞で特異的に発現している膜タンパク質の網羅的な同定を試みた。組織型の異なる3種の肺がん細胞 (腺がん由来A549細胞、扁平上皮がん由来RERF-LC-AI細胞、小細胞がん由来N231細胞) に対し、細胞表面タンパク質単離キットを用いて膜タンパク質を回収した。その後、質量分析装置(LC-MS)を用いたショットガン解析によりタンパク質の同定を行った。今後は肺腺がん細胞にのみ発現している細胞膜タンパク質に着目し、培養上清中への分泌を確認後、肺腺がん患者血清中のタンパク質レベルを測定し、血清診断マーカーとしての有用性を評価する予定である。

 

キーワード: 1. 肺腺がん   2. 膜タンパク質   3. 早期診断マーカー

一般口演 1-5

 

キノーム解析によるHDAC阻害剤併用療法の新規標的候補分子プロゲステロン受容体の同定

Kinome analysis identified progesterone receptor as a novel candidate target for combination therapy with HDAC inhibitor.

藤井一恭1・野口玲2・吉松有紀3・近藤格2, 4・金蔵拓郎1

1 鹿児島大学医学部皮膚科, 2 国立がん研究センター研究所・希少がん研究分野, 3栃木県立がんセンター研究所・患者由来がんモデル研究分野, 4栃木県立がんセンター研究所

 

進行期の皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)に対する根治療法は確立されていない。ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害剤はCTCLに有効な治療法であるが、単剤では獲得耐性が必発であり、適切な併用療法の開発が求められている。我々はCTCLの細胞株のキノーム解析により、Src経路に関わる分子群の活性がHDAC阻害剤の刺激により共通して亢進することを明らかにした。同定された分子群の中でもプロゲステロン受容体の活性はHDAC阻害剤の刺激により特に亢進していた。そこで、プロゲステロン受容体拮抗薬であるミフェプリストンを用いて、ロミデプシンによる抗腫瘍効果の増強効果についてin vitroで検討したところ、ミフェプリストンはロミデプシンによるヒストンのアセチル化を増強し、細胞増殖抑制効果やアポトーシス誘導効果を増強させた。プロゲステロン受容体はHDAC阻害剤の併用療法のターゲットとなりうると考えられる。

 

キーワード: 1. HDAC阻害剤    2. キノーム解析    3.  皮膚T細胞リンパ腫

一般口演2 電気泳動全般

一般口演 2-1

アガロースゲルゲート過渡等速電気泳動による尿セルフリーDNA の分離

Urine cell-free DNA extraction by agarose gel-gate transient isotachophoresis

深澤 悠仁1・相馬 渉2・松本 昂大2・二井 信行1,2

1 芝浦工業大学大学院理工学研究科機械工学専攻, 2 芝浦工業大学工学部機械工学科

 

尿中のセルフリーDNA (尿cfDNA) は,がんや感染症の診断においてほぼ無侵襲で得られるバイオマーカーとして注目されている.しかし,尿cfDNAは微量かつ高度に断片化していて,cfDNA用に最適化された固相抽出ですら診断に十分な感度が得られにくい.そこで我々は,陰イオン交換樹脂への尿cfDNAの吸着と過渡等速電気泳動 (tITP) による,尿cfDNAの簡便かつ高効率な抽出方法を提案する.まず,可動式のアガロースゲルゲートで分画可能なオープン流路を用い,pHとふるい効果の異なるゲル層を1泳動レーンに並べて配置した.次に,45 bp結核菌ゲノムDNA断片を人工尿1 mLに混入し,陰イオン交換樹脂で吸着・溶出し,溶出液中のDNA断片をtITPにより濃縮・分離した.抽出した25 μLの低融点アガロースゲルをサンプルとし,定量PCRでDNA収率を評価した結果,14.29±8.57 % (平均±SD) が得られた.

 

キーワード: 1. セルフリーDNA   2. 過渡等速電気泳動   3. マイクロ流体デバイス

一般口演 2-2

「Phos-tag TM蛍光ゲル染色剤」によるリン酸基の検出

Detection of phosphate groups using “Phos-tagTM gel fluorescent staining dye

井野 洋子1・秋山 知子1・森山 佳谷乃1・小橋 達弘2・木村 弥生1

1 横浜市大・先端研, 2 株式会社ナード研究所

 

電気泳動により分離したリン酸化タンパク質は、リン酸基特異的に結合する蛍光ゲル染色剤や抗リン酸化アミノ酸抗体などを用いて検出可能である。一方、それらに比べて安価で長期冷凍保存が可能な染色剤として、波長の異なる4種類のPhos-tag 蛍光ゲル染色剤がある。この染色剤は、操作ステップが少なく、2時間以内に染色操作を完了でき、生理的pH下でリン酸基をもつタンパク質を検出することができる。またその中の一つPhos-tag Magenta(Ex/Em=547nm/561nm)は、蛍光タンパク質染色剤であるSYPRO Ruby(Ex/Em=450nm/610nm)との二重染色も可能である。さらに内在性リン酸化タンパク質の検出だけでなく、人工的にリン酸基を付加したタンパク質についても、効率的に検出可能であった。本発表では、これらPhos-tag 蛍光ゲル染色剤の活用法について報告する。

 

キーワード: 1.リン酸化タンパク質 2.Phos-tag magenta 3.蛍光検出

一般口演 2-3

光重合性Phos-tag含有アクリルアミドゲルを用いるリン酸化化合物のオンライン濃縮・標識・分離システムの開発

In situ photopholymerization of Phos-tag acrylamide gel in poly(dimethylsiloxane)/ glass microchip for specific entrapment and derivatization followed by microchip electrophoretic separation of phosphorylated compounds

山本佐知雄,矢野祥子,木下充弘

近畿大学薬学部

 

生体内のタンパク質リン酸化反応の全体像を解明しようとするリン酸化プロテオミクスでは質量分析装置を基盤とした解析だけでなく、速度論的な解析をリアルタイムで実施できる分析法が必要になると考えられる。本研究では柔軟性・耐久性があり、汎用性の高いポリマーであるpoly(dimethyl siloxane) (PDMS)とガラスの多分岐流路を有するマイクロチップを作製するとともに、流路内にリン酸モノエステル基を選択的に捕捉することが可能なPhos-tagを含有したアクリルアミドゲルをピンポイントで作製することにより、リン酸化化合物の選択的な濃縮と高感度検出のためのオンライン蛍光標識化技術、およびオンライン標識を行った試料の分離といった一連の分析操作をマイクロチップ流路中で達成する方法を開発した。

 

キーワード: 1. Phos-tagアクリルアミド 2.マイクロチップ電気泳動 3.リン酸化タンパク質

一般口演 2-4

血液ペプチドーム解析のさらなる高感度化を目指して

Enhanced sensitivity of ​plasma peptidomics

溜亜海1・鈴木輝1・松井崇1,2・小寺義男1,2

1 北里大学理学部物性物理学講座, 2 北里大学理学部附属疾患プロテオミクスセンター

 

全身を巡る血液は様々な臓器・組織の情報を内包している。中でも血液中のペプチドホルモンは生体の恒常性や健康維持に非常に重要な役割を担っている。したがって、血中ペプチドの詳細な分析は臓器・組織の状態の理解や生物システムの解明への大きな助けとなる。当研究室では血液を対象とした独自の高効率ペプチド抽出法 Differential Solubilization Method (DS 法)を確立し、分画・濃縮法と組み合わせて血液試料から濃度1nM~1pMのペプチドホルモンの直接検出に成功している。しかし、ここで検出したペプチドはイオン化効率の高い一部のペプチドにすぎず、多くのペプチドホルモンの検出は未だ実現できていない。そこで本研究では、ペプチド分析技術のさらなる高感度化を目指し、ペプチド分析過程における損失の評価法を確立した。本発表では、この評価方法を用いてペプチド抽出からLC-MS分析までの各ステップにおけるペプチドの損失を評価した基礎的検討結果について報告する。

 

キーワード: 1.  plasma  2. peptidome   3.  bioactive peptide

一般口演 2-5

非変性条件の2次元電気泳動法で分離・検出されたタンパク質複合体の電気泳動法による抽出

Electrophoretic extraction of protein complexes after separation and detection by a combinational method of non-denaturing electrophoresis and reversible staining

中尾香琳1・O島崎洋次2

1愛媛大理, 2愛媛大院理工

 

マウス肝臓から抽出された水溶性タンパク質を非変性条件の2次元電気泳動法(2-DE)により分離すると、複数の異なった分離位置に同じ働きを持つ酵素が検出された1)。これは酵素が他のタンパク質と複合体を形成したまま分離されていると考えられる。そこで2-DE分離された複合体を構成するタンパク質成分の候補を抗原抗体法により調べ、カルボキシルエステラーゼ、トランスフェリン、カーボニックアンヒドラーゼが複合体を形成している可能性が示された。さらにこの2-DE分離された複合体を、種々の抗体を結合したprotein A agarose担体をつめた円筒状ゲル内で電気泳動法により溶出し、これらのタンパク質が複合体を形成しているかを検討する方法を検討したので報告する。

参考文献1) Y.Shimazaki ,Y.Sugawara ,T.Manabe , Proteomics 4 (2004) 1406-1411.

 

1. 2-DE  2.タンパク質複合体  3.非変性 

一般口演 2-6

低濃度SDS抽出液を用いたSDS-PAGEによる甲殻類アレルゲンの解析

Crustacean allergen analysis by SDS-PAGE with low concentration of SDS in the extraction medium

大石正道・内野澪旺

北里大学理学部物理学科生物物理学講座

 

甲殻類アレルギーはエビやカニなどで引き起こされる食物アレルギーの一種で、生エビにだけ反応し加熱すると反応しない、あるいはエビには反応するがカニには反応しないなど、反応性が患者ごとに異なる。そこで、本研究では、インフォームドコンセントを得た甲殻類アレルギー患者の血清を用いて、甲殻類アレルゲンの解析を行った。その結果、通常の2%SDSを含む抽出液を用いたSDS-PAGE法とWestern blot法でアレルゲンが検出された場合や、0.1%SDS抽出液を用いたSDS-PAGE法ではアレルゲンが全く検出されない事例が確認された。後者の場合、ドットブロット法では明確な反応があるにもかかわらず、ドットブロットしたPVDF膜を0.1% SDSを含む電気泳動バッファー中で1時間インキュベートしただけで反応が消失した。この患者の甲殻類アレルゲンは0/1%SDSにより変性し、エピトープが壊れたと推測された。

 

キーワード: 1. 甲殻類アレルゲン   2. 低濃度SDS 抽出  3. SDS-PAGE